理科 地学部 第10回日本地学オリンピック本選で銀×2、銅×1
2018.03.17
3月11日から13日にかけて、第10回日本地学オリンピック本選が筑波大学で行われ、高校2年の鈴木泰我君、中学3年の大河内隆暁君の2名が銀賞を、高校2年の奥角碧君が銅賞を受賞しました。受験者1903名のうち、予選を通過したのは67名で、本校からも7名が通過し、6名が本選に出場しました。銀賞は成績11位から20位に、銅賞はそれに次ぐ10名に与えられる賞です。受賞おめでとうございます。
詳しくはこちら↓↓↓↓
http://jeso.jp/jeso/final.html
本選に参加した6名
以下、銀賞を受賞した鈴木泰我君のコメントです。
日本地学オリンピック本選に参加しました、高2の鈴木泰我と言います。
少し前に平昌オリンピックが開催されて今もパラリンピックが続いていますが、さて地学オリンピックだ!と聞いても、多くの方が首を傾げられると思います。実は、日本ではこれから紹介する地学以外にも、数学、物理、生物など、いわゆる「科学オリンピック」というものがたくさん催されていて、参加者が各分野の能力を競っています。
さて地学オリンピックもそのような”科オリ”の一つであるわけですが、3月に開催された『本選』では6分野に分かれた試験が実施されました。具体的には①地質 ②固体地球 ③天文 ④気象 ⑤海洋 ⑥化石及び岩石鑑定 と、かなり広範な分野に対応する必要があります。
試験を終えると、成績上位者には上から10人ずつ金銀銅メダルが授与されます。
私は今回銀メダルをいただくことができました。本選前は自信がなく、銀メダルでも取れれば上等などと考えていました。しかし銀メダルを取れた今から振り返ると、なぜ金メダルまで頑張れなかったのかと後悔する気持ちも強いです。
集まった全員が上位を目指して頑張っているとはいえ、全体としては”お楽しみ宿泊イベント”という色が強いです。二泊三日で行われる宿泊の内、二日目の午前中のみが試験時間であり、残りの時間は他の様々なイベントに充てられています。
とても印象的だったのは私が三日目に参加した筑波山ジオパーク見学でした。
筑波山について教えていただいたことを通して、地学の面白さを少しでも感じていただければ幸いです。
筑波山は今ちょうど梅林が満開の季節であり、たくさんの観光客が訪れていましたが、実はこの山、地学の視点から見るとまた別の姿が見えてきます。
筑波山は様々な和歌に登場します。よく、つくばねの~などと著されていますね。また日本の美しい山というようなランキングにもかなりの頻度で登場します。
筑波山は、山頂付近は傾斜が比較的険しく、山麓付近になると緩やかになっています。このような形は富士山などの火山に似ており、日本人が美しいと感じる形というわけです。しかしながら、筑波山は火山ではありません。火山以外の山は、例えば周囲の浸食によって作られたものが多いですが、そのような山は概して傾斜が一様であることが多く、筑波山のような形は少ないのです。
さて、ここで地学の目をもって地面を見ながら歩いてみると、その理由が分かってきます。
すそ野付近を歩いてみると白っぽい中に少しだけ黒い斑点のある岩が目立ちます。そしてだんだん上ってみると、中腹辺りから異なる岩質の岩に変わるのです。少し灰色がちな中に大きな黒い結晶が混じるようになります。
さて、最初に見た岩は花崗岩、そして後に見た岩は斑レイ岩という岩です。この2つの岩は“強さ”が異なります。ここでいう強さとは”風化に対する耐性”です。実は前者の花崗岩は風化しやすい岩石として有名です。花崗岩が風化した砂は真砂と呼ばれており、世界中の砂は花崗岩から生まれたとも言われています。つまり、山のすそ野辺りでは花崗岩が風化侵食を受けて緩やかな傾斜を作り、頂上付近では風化しにくい斑レイ岩が険しい地形を作っているというわけなのです。
そして実は、現在筑波山で行われている研究が、花崗岩と斑レイ岩を始めとしたマグマを起源とする岩がどのように形成されるのかについての定説を書き換えるかもしれないと言われており、地球環境の形成について大きな手掛かりとなる可能性があるとのことです。
皆さんも筑波山のみならず、山を訪れた時に、地面に目を向けてみると面白いことが見つかるのではないでしょうか?
さて、ここまで読んでくださった方に感謝を。
この文章だけで地学オリンピックに興味を持つのは難しいと思いますが、地学という分野は物理や生物、地理など様々な分野と接しており、本来であれば多くの人が楽しめる学問です。化石鉱物、天文などは様々なイベントが盛んに開催されていますので、見かけたらぜひ参加してみてください。これは面白いと思って地学をより深めてくださった方がいたら、この文章を書いた私としましては大変うれしいです。